どうなる? 芹ヶ谷公園再整備
〈目次〉
芹ヶ谷公園はどう変わる?
(1)町田市による芹ヶ谷公園“芸術の杜”プロジェクトの概要
町田市は、2016年度に「芹ヶ⾕公園再整備基本計画」を策定し、2024年度のリニューアルオープンに向けて、「芸術の杜」というテーマのもと、検討を進めています。(仮称)国際工芸美術館を芹ヶ谷公園内に建設し、一体的に整備するという計画です。
「芸術の杜」のコンセプトは「パークミュージアム」。
公園の価値と資源を活かし、まちなかの賑わいと連携させていくことで、町田の多様な文化芸術の活動や公園の豊かな自然を体験しながら学び楽しむことができる新しい体験型の公園を目指すとのことです。町田の文化の集積であると同時に新しい文化が創造されていく場にしていく方針です。
「芹ヶ谷公園"芸術の杜"パークミュージアム CONCEPT BOOK」
「芹ヶ⾕公園”芸術の杜”パークミュージアム デザインブック」
町田市の建設計画の問題点
一見、すばらしいコンセプトの「芹ヶ谷公園“芸術の杜”プロジェクト」ですが、実際の建設計画・工事計画をよく見てみると、コンセプトと矛盾する問題点がいくつも浮かび上がってきます。
自然環境への影響、周辺住民の生活動線への影響、国際版画美術館の収蔵品への影響、市民のアート活動への影響、高額な建設費など、いずれも見過ごすことのできない問題です。
(1)樹木が伐採され、谷戸の地形が削られる!?
町田市の建設計画では、国際工芸美術館は、国際版画美術館の北西側斜面の中腹から高台にかけての位置に建設される計画になっています。
このため、谷戸の地形が大きく削られ、豊かに育った樹木も伐採されてしまいます。
また、工芸美術館が斜面上部にあると、現在の版画美術館の駐車場からでは収蔵・展示品や資材を搬入することができません。
このため、現在のアプローチの遊歩道に搬入車両通路が建設されることになっており、森の丘小広場周辺の緑も大規模に伐採されてしまいます。
(2)もみじと池の景観がなくなる!?
国際工芸美術館との連絡通路が、国際版画美術館の西側に作られる計画になっています。
工芸美術館は高いところに建設予定ため、版画美術館とはエレベーターと階段で繋ぐことになりますが、このエレベーターと階段が、地形を生かして作られた池のある中庭を潰して配置される計画です。
このため、版画美術館ロビーから望むもみじ園の眺望が失われます。
(3)美術館建物の中に生活通路!?
国際版画美術館のエントランスホールが、国際工芸美術館を経て市街地へと抜ける生活通路の一部になる計画になっています。
版画美術館はもともと、収蔵品の劣化を防ぐため、外気の影響を受けにくいように設計されています。
しかし、生活通路が館内を通れば、特に雨や雪の日には、濡れた傘や泥が館内に持ち込まれるようになります。これは、展示室の温湿度管理や虫害対策にも影響が出る恐れがあります。
また、常に不特定多数の人が通り抜ける状態は、セキュリティの課題もありそうです。
(4)市民工房が美術館の外へ移転・縮小!?
現在、工房や喫茶室があるエリアに通路とアートステージを新設するため、工房が館外の別の場所に移設される計画になっています。また、移設後は規模が小さくなったり、機能が縮小される可能性があると言われています。
館内に併設された工房は国際版画美術館の重要な機能の一つです。移設されると、長年培われきた芸術鑑賞と創作活動の結びつきが断ち切られてしまいます。
なお、この新設予定のアートステージで行われるような活動は、今でもエントランスホールや講堂で無理なく行われています。
(5)美術館の要、学芸員のスペースが狭くなる!?
新しく作られる国際工芸美術館の建物は、展示機能と収蔵機能のみが作られ、学芸員・事務機能を作る計画がありません。つまり、現在の国際版画美術館の学芸員・職員の執務スペースに、工芸美術館の学芸員や職員も押し込まれる計画になっています。
これでは、それぞれの美術館にとって重要な、学芸員による調査・研究や企画・運営を行うスペースが手狭となり、適切に行えなくなる可能性があります。
また、工芸美術館に職員が配置されないことで、セキュリティの課題もありそうです。
(6)かさむ建設費!?
高低差が大きく工事が難しい場所を無理に切り開き、複雑な形をした建物を建設するには多大なコストがかかります。
国際工芸美術館の建設には、近年完成した他の美術館と比べて、面積あたり2倍から3倍にも及ぶ高額な工事費が見込まれています。
これに加え、工房を館外に移設するために、さらに8億円もの費用がかかると言われています。
また、生活通路を美術館内に通すことになれば、竣工後も空調やセキュリティ管理のための費用が継続的にかかることになります。