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芹ヶ谷公園と国際版画美術館

​〈目次〉

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芹ヶ谷公園と国際版画美術館のなりたち

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(1)自然の面影を残す谷戸だった芹ヶ谷

芹ヶ谷はいくつもの湧水があり、かつては芹ヶ谷川と呼ばれた恩田川の支流が流れる谷戸です。芹ヶ谷側は現在はほとんどが暗渠となり、高瀬橋付近で恩田川に流れ込んでいます。傾斜地の雑木林だったことから、周囲が市街地として開発が進む中でも、自然地として武蔵野の面影を残してきました。

1961年に約10haが都市計画で地区公園に、1982年に面積を増やして約11.7haが風致公園に指定され、その年の4月に西側エリアの約4haが芹ヶ谷公園として開園しました。

​そして、1987年に日本で唯一の版画を中心とする美術館として国際版画美術館がオープンするとともに、公園全域の11.7haが開園しました。

(写真左:80年代の国際版画美術館予定地空撮/写真右:1976年と1977年の「広報まちだ」に掲載された公園整備前の芹ヶ谷)

国際版画美術館予定地空撮と広報まちだ
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(2)自然を保全し生かす建設コンセプト

国際版画美術館を建設するにあたっては、公園の自然環境との調和が重視されました。当時の町田市立国際版画美術館建設審議会による「基本構想」には、建設位置決定について5つの条件が明記されています。

  1. 既存の自然をできるだけ保存すること

  2. 現状の地形を利用し、建設費の節約をはかること

  3. 公園との調和が可能なこと

  4. 中心市街地からのアプローチがしやすいこと

  5. 駐車場および搬入路を設置しやすいこと

国際版画美術館建設基本構想答申
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(3)環境にも美術品にもやさしい建物が完成

この5つの条件を全てクリアした結果、現在の国際版画美術館が完成しました。

【1. 既存の自然環境がしっかりと保存されています】

もともとあった樹木を極力保全するように建物を配置。建物の窓から見える景色も、周囲の起伏に富んだ地形や木々を最大限生かすように工夫されました。

国際版画美術館ロビーより池
【2. 元の地形が上手に生かされ、建設費も節約されました】

元の入り組んだ地形に手をつけず、谷間にすっぽり収まる形に建物を設計。大掛かりな造成工事をしないことで工事費を低く抑えています。また、美術館北西側の窪地は、その地形を生かして回遊式の庭園となりました。

国際版画美術館竣工当時空撮
【3. 公園との調和が図られました】

緑青銅板の屋根とレンガの外壁で作られた断熱性に優れた建物は、収蔵品を劣化から守ります。また、省エネルギーで環境への負荷が少なく長寿命。開園から30年以上経った現在、大きく育った樹木に囲まれて公園の風景になじんでいます。公園から直接入れる「喫茶けやき」や建物前のせせらぎ広場が、公園と版画美術館の人々の往来を繋いでいます。

国際版画美術館喫茶けやきと公園の緑
【4. 中心市街地から気持ちよくアクセスできます】

町田中心市街地から住宅地を抜けて公園のゲートをくぐると、木々に囲まれた心地よい遊歩道を通って美術館まで導かれます。彫刻やベンチが置かれた森の丘小広場やせせらぎ広場は、公園を散策する市民の憩いの場となっています。

芹ヶ谷公園森の丘小広場
​【5. 駐車場と搬入路がバリアフリーで安全に確保されています】

​駐車場は、谷戸の南端の平地に設けられました。ユリノキ並木の歩道を通って、版画美術館エントランスまでバリアフリーでたどり着けます。収蔵・展示品や資材の搬出入口は、歩行者の安全に配慮して、歩道から離れた駐車場の奥に設けられています。

国際版画美術館南東外観2014
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市民が鑑賞・創作・発表できる開かれた美術館

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(1)公園と繋がる美術館

​【せせらぎ広場】

国際版画美術館の前の広場を流れるせせらぎは、暖かい季節には水が満たされ、子ども達が水遊びを楽しむ光景は芹ヶ谷の風物詩。広場にはベンチや彫刻が配置され、公園を散策する市民の憩いの場となっています。

また、毎年11月上旬にここで開催される「ゆうゆう版画美術館まつり」は、市民にアートを身近に感じてもらう場となっています。

芹ヶ谷公園せせらぎ広場
【喫茶けやき】

せせらぎ広場に面した「喫茶けやき」は、障がいのある方もいっしょに働く喫茶室。壁面いっぱいの大きな窓からは、広場の光と緑を望みます。美術館エントランスホールからと広場からの2つの入口があり、美術館来訪者だけでなく公園利用者にも安らぎのひとときを提供しています。

国際版画美術館喫茶けやき
【エントランスホール】

​天窓から自然光が降り注ぐ、落ち着いた雰囲気のエントランスホールは、公園から入ってきた人にアート作品との出会いを期待させてくれる場所。音響効果も良く、ミニコンサートやウェディングなどのイベントにも利用されています。

版画美術館エントランスホールでの音楽会
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(2)作品を見て回りやすい柔軟な展示室

版画作品にふさわしい広さに設計された展示室は、4つの部屋に分かれ、常設展や企画展の様々な内容に応じて柔軟に模様替えが可能。来館者は、わかりやすい順路で、ひとつひとつの作品をじっくりと鑑賞することができます。

照明も、作品が見やすいながらも痛めない最適な照度になるよう、学芸員と建築家が検討を繰り返し導き出しました。

貴重な作品を守るため、温湿度や光を最適なコンディションに保てるよう、空調や扉の配置にも細心の配慮がなされているのです。

国際版画美術館展示室
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(3)市民と世界の作家が集う版画工房とギャラリー

【版画工房とアトリエ】

国際版画美術館には、版画を「見る」だけでなく、「作る」楽しみを経験できる版画工房とアトリエが併設されています。

工房には、様々な種類の版画制作に使われる本格的な設備が整っています。このような本格的な設備を一般の人々が使える場所は、開館から30年を経た現在でも全国的にきわめて珍しく、町田市が誇るべき施設です。

​そのため、版画工房には市民だけでなく関東一円から利用者が訪れ、町田の芸術活動の拠点となっています。​企画展と連携し、世界的な作家を招いての公開制作も行われます。

国際版画美術館工房
【市民ギャラリー】

国際版画美術館には、「見る」「作る」に加えて、「発表する」場も用意されています。

市民ギャラリー(市民展示室)は、グループ・個人による版画はもちろん、絵画・工芸・書・写真・デザインの展示に利用できます。

日頃から版画工房やアトリエで創作活動を行っている市民だけでなく、市内の一流作家から小中学生まで、幅広い人々のアート発信基地となっています。

国際版画美術館市民展示室
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