こうすれば良くなる! 再整備計画
〈目次〉
ちょっと待って! 町田市の計画
(1)スケジュールの進め方、基本設計のまとめ方の見直しを
中島雅人氏(一級建築士、八王子市在住)
【町田市の計画のここが疑問】
整備計画は、『町田市住みよい街づくり条例』の前文にあるように「住民と行政が相互理解のもとに意見交換を十分に行った上でそれぞれの役割を明確にし、互いに協働して身近な街づくりに取り組む姿勢が不可欠である」という精神で進めるべきです。
●疑問点1:市の予算を大きく上回る基本設計のコスト。
●疑問点2:高所スロープやブリッジは楽しいが、恐怖感を抱く人は多く、劣化も早い。
●疑問点3:市民が要望する公園内生活通路を、強引に館内のエレベーター通路と併用。
●疑問点4:コスト削減を図るためという複数施設の一体運営が、実際はコスト倍増・巨大化へ。
●疑問点5:国際版画美術館の要の機能「版画工房」を無くし、外部に移設。
●疑問点6:優れた文化施設として広く認知されている「町田市立国際版画美術館」を大幅改修して価値を低下させる恐れ。
●疑問点7:広く市民に問うことなく、上記の問題点を残したまま実施設計に入ろうとしている。
【町田市公文書から読み取れる決定プロセスの問題点】
国際工芸美術館の建設場所が決まった経緯を知るため、当時の議事録と検討資料等を公文書公開請求により取り寄せました。
それを読むと以下の問題点が明確になりました。
●問題点1:当初から版画美術館の重要な機能である「版画工房」等を外に出すことが想定されている。
●問題点2:検討案が3案と少なく、評価項目もわずかで、他の様々な可能性について検証されていない。
●問題点3:建設場所が工事費に大きく影響するにも関わらず、その検討が行われていない。
●問題点4:議事録によると限られた関係者のみで建設場所が決定されている。
【建設場所の比較案を丁寧に検討することで見えてくる可能性】
町田市の2019年8月の工芸美術館建設場所比較検討案3案を更に丁寧に検討すると、どのような可能性が生まれるか考えてみました。建設場所による工事費の違いも評価に加えました。
●A'案…市のA案をもとに、収蔵庫と展示室を南側に集約
●B'案…市のB案をもとに、建物を3層に重ねてコンパクト化
●C'案…市のC案をもとに、エレベーターを公園水路エリアに移動
すると、採用されなかった案も、少し工夫を加えるだけで、それぞれにメリットが出てくることがわかります。
また、市が選択した案が、実は最も全体コンセプトにそぐわないことも見えてきました。
【現地説明会における町田市の説明の疑問点】
市民の要望により、5月にようやく行われた町田市による現地説明会では、参加者から様々な問題点が指摘されていました。それに対する町田市の説明の中で、専門的な視点で明らかに疑問に感じた点を書き留めました。
●工芸美術館へのアクセスルートについて
…美術作品保護のためエレベーターの屋上階から展示室階に直接行けないはずだが、直接行けるとの説明があった。
●工房を移転せざるを得ない理由について
…工房には当初からガス設備があるにも関わらず、工房を移設するのはガス設備がないからだと説明していた。
このような町田市の説明を聞いて感じたこと、および、本来必要な対応策についても意見を加えています。
(2)識者の意見書:大宇根弘司氏による工事差し止め仮処分申し立てについて
2021年4月20日に、大宇根弘司氏(町田市立国際版画美術館設計者)が、町田市による(仮称)国際工芸美術館工事差し止めを求める仮処分を東京地裁立川支部に申し立てました。これに際して、識者の方々が仮処分の必要性について意見書を提出しました。
下記より、大宇根氏の記者会見配布資料と識者の方々の意見書をダウンロードしてお読みいただけます。
【仮処分申請を行う理由について】
【仮処分申し立てについて識者の意見書】
(建築家、香山壽夫建築研究所代表 、東京大学名誉教授 、アメリカ建築家協会名誉会員、日本建築家協会名誉会員)
(建築家、アルセッド建築研究所主宰、芝浦工業大学名誉教授、日本建築士会連合会名誉会長)
(都市計画家 、東京都立大学名誉教授、元町田市都市計画審議会会長)
(建築家、野沢正光建築工房代表 、横浜国立大学非常勤講師)
(建築家、河野進設計事務所代表、元日本建築家協会副会長)
(建築家、風総合計画研究所代表、町田市在住)
(建築家、空間設計研究所代表 、町田市在住)
(版画家 、東京藝術大学名誉教授 、日本美術家連盟理事長、日本版画協会理事、元町田市美術館建設委員、元国際版画美術館運営委員、 現国際版画美術館作品購入委員)
(山梨県立博物館館長 、筑波大学名誉教授)
(元宮城県美術館館長)
(3)国際工芸美術館工事差止め申し立てに寄せられたご意見
2021年4月20日に、大宇根弘司氏(町田市立国際版画美術館設計者)が、町田市による(仮称)国際工芸美術館工事差し止めを求める仮処分を東京地裁立川支部に申し立てました。このニュースを知った方々から、多くのご意見が寄せられました。
下記より、寄せられたご意見(個人が特定できる部分は網掛けするなどしてあります)をダウンロードしてお読みいただけます。
専門家の問題解決アイデア
町田市の建設計画・工事計画の問題点を解決し、本来の「パークミュージアム」コンセプトを実現する「芹ヶ谷公園“芸術の杜”」を作るもっと良い方法はないのでしょうか?
建築家など専門家の意見・代替案を載せていきます。
(1)大掛かりな土地造成をやめて、工房拡張費用を捻出
上田喜一郎氏(一級建築士、埼玉県在住)
【国際工芸美術館の入口の見直し】
国際版画美術館北西斜面に国際工芸美術館の建物を建設することになると、大掛かりな造成工事と工事資材搬入用道路建設が必要となります。これにより、貴重な樹木を伐採することになる他、湧水の遮断や大雨時の土砂崩れの可能性が生じます。
国際工芸美術館建設場所を国際版画美術館のアトリエ脇に変更し、国際版画美術館のエントランスホール既存エレベーター脇から連絡通路で繋がるよう提案します。これにより、造成工事費用が大幅に減額され、南側の自然を残すことができます。
【土地造成費用を工房拡張費用へ】
工房と市民ギャラリーは、美術館の中にあってこそ生涯学習の効果が発揮されるものです。また、版画に必要な機材・道具・素材は技術の進歩に伴って種類が増えるので、むしろ工房スペースを拡張してもよいくらいです。工房を外部に移転したり縮小したりすることは、本来の目的が失われます。
上記のように国際工芸美術館建設で減額された費用を、工房の改修と拡張に使用することを提案します。
(2)工芸美術館建設位置を見直すことで、工事費を削減し、版画美術館の棄損を最小限に
大宇根弘司氏(日本建築家協会元会長、国際版画美術館設計者)
【既存建築の著作権、展示室の安全、工房の存在意義】
工芸美術館館の設計は、私が設計した版画美術館およびアプローチ・庭園を著しく棄損するものとなっております。これは、市民の資産が棄損されることでもあります。
●版画美術館の池を潰してエレベーターホールと階段シャフトを設けること。それにより美術館内部が市民の生活通路となること。
●工芸美術館のサーヴィスヤード建設のために、広域にわたって樹木を伐採すること。
●エントランスホール、工房の存在意義。
●無謀な建築計画による税金の浪費。
▶大宇根弘司氏の「現計画の問題点に関する意見書」をダウンロード(PDF)
【工芸美術館の位置を北側にずらすだけで工事費を大幅減額】
私は、工芸美術館を少し北側の斜面下(版画美術館の隣)にずらすだけで、半額近くで出来ることを市に説明してあります。
●代替案の利点1:樹木の伐採面積が3分の1。
●代替案の利点2:建物が地面に接する面積が大きくなり、杭工事・山留工事が減る。
●代替案の利点3:動線がわかりやすい生活通路。自転車もエレベーターに持ち込み可能。
●代替案の利点4:工事車両が公園内を通過する距離が短く、通学路への影響が少ない。
●代替案の利点5:工事の難易度が低い。
●代替案の利点6:工事期間を18カ月短縮可能。
●代替案の利点7:工事費用を10億円縮減可能。
市民の問題解決アイデア
日頃から芹ヶ谷公園や国際版画美術館をよく利用する人々の考えを、よく聞いて適切に取り入れることが、近隣住民にも、広く町田市民にも、観光で町田を訪れる人にも愛される「芹ヶ谷公園“芸術の杜”」になるのではないでしょうか。
さまざまな立場の市民の意見・代替案を載せていきます。
(1)市民を一挙に集め、オープンな場を作り、全市的なシンポジウムを
町田市玉川学園のフリーペーパー『玉川つばめ通信』の2022年1月1日発行号は、「せりがや特別号」です。
この中で発行・編集人の宇野津暢子氏は、芹ヶ谷公園再整備計画が市の中核公園のことであるにも関わらず知らない市民が多すぎることを問題視し、町田市に対し「コロナ対策を徹底したうえで市民を一挙に集め、オープンな場を作り、全市的なシンポジウムを開催してくれませんか?」と提案しています。
さらに、さまざまな立場の8人に「せりがやのこと」を突撃取材して得たコメントも掲載されています。
下記よりダウンロードして、全文をお読みいただけます。
(2)芹ヶ谷公園“芸術の杜”DESIGN BOOK報告会の参加者からの意見
2021年3月20日・23日に町田市によって開催された「芹ヶ谷公園“芸術の杜”DESIGN BOOK報告会」に参加した市民からの感想・対案解決策を紹介します。
土屋利之氏〈町田市在住〉
『芹ヶ谷公園“芸術の杜”DESIGN BOOK報告会に参加して』(要約)
【感想】
(1)今回のタイトルが説明会でなく、報告会としたことは問題
(2)提示の計画のコンセプトが周辺住民や来園者、美術館利用者の考えと乖離
(3)新たに発生する維持管理コストの懸念
(4)放置されている危険個所
(5)集客を第一義とする公園改造は芹ヶ谷になじまない
(6)既存美術館の価値損失への無頓着
(7)公共通路新設に伴う警備、環境負荷への管理経費の懸念
(8)新設構造物の耐久性への疑問
(9)原点に返って建設計画を見直す勇気に期待
【対案解決策】
(ア)進入路の高低差解消・バリアフリー化は、独立エレベーター棟を
(イ)工芸美術館は、周辺住民への負荷の少ない建設場所に変更
(ウ)谷戸をつぶす野外ステージ等を作らず、小動物や草花にも配慮した環境づくりを
下記よりダウンロードして、全文をお読みいただけます。
▶土屋利之氏の『芹ヶ谷公園“芸術の杜”DESIGN BOOK報告会に参加して』全文をダウンロード(PDF)
町田市ホームページには、報告会の議事概要と意見回答が掲載されています。併せてご覧ください。(下記ページの下の方にあります)
(3)「町田市立国際版画美術館を知る・考えるシンポジウム」参加者アンケート結果
2020年11月29日に、町田市立国際版画美術館の工房を守る会が主催して「町田市立国際版画美術館を知る・考えるシンポジウム」が開催されました。
シンポジウム終了後に参加者の皆様にご記入いただいたアンケートの結果をまとめました。
【アンケートに寄せられた意見〈抜粋〉】
●国際版画美術館は世界の中でただ1つの貴重で素晴らしい美術館です。私たち市民の誇りです!〈町田市在住〉
●版画工房を具備している版画美術館のユニークさや価値の程がはっきりと理解することができた。経済的な考えのみを優先させる事を行なおうとしているやり方は文化に対する考えが全く欠落している。〈町田市在住〉
●他の市にはない美術館が国際版画美術館である。美術館の中に版画制作の工房は不可欠である。生涯学習にも、美術作品を創る設備は必要。〈町田市在住〉
●益々大切さを痛感しました。長い間工房を利用しているものとして、どんなことをしても、この工房を守りたいと思いました。〈横浜市在住〉
●制作意欲をかきたてることに重大な意味があります。〈横浜市在住〉
●工房ではリトグラフ、銅版画、シルクスクリーンなど様々な版画の技法など学び、セミナー終了後は独自にプレス機など使用して作品を作る事が出来ました。同じ版画を共有している人との交流もあり、楽しく学び制作できとても有意義でした。〈町田市在住〉
●版画美術市民展示室を借りる料金を安くしてもらいたい。講堂がいつも空いている。講堂も展示可能とすべき。〈町田市在住〉
●学芸員の企画が足りない。 例)昔は版画工房の受講者の募集などがあったが最近は開いたことがない。〈町田市外在住〉
下記よりダウンロードして、全ての意見をお読みいただけます。